トップページなるほど川の豆知識実務技術者のためのレーダ雨量計講座(平成22年2月更新)
レーダ雨量計による降雨観測
English
レーダ雨量計による降雨観測
 赤城山に、昭和51年に日本で初めて雨量観測を目的としたレーダ雨量計が設置されて以来、現在までに26基のレーダ雨量計が全国に配置され、半径120kmの定量観測範囲で日本全土を覆うことで、精度の高い降雨観測を行っています。
 また、平成14年度には新たに国土交通省のレーダ雨量計全国合成システムが構築され、全国26基のレーダ雨量計の連続的な合成と地上観測雨量を用いた精度の高い補正により、レーダ雨量計の全国合成処理が実施されています。この結果は、一般向けの防災情報として提供される他、河川管理や道路管理の実務に有効に活用されています。

レーダ雨量計サイト

 
データ解析とデータサービス装置

 
データ表示端末
レーダ雨量計サイト データ解析と
データサービス装置
データ表示端末
【図1】 レーダ雨量計観測局
レーダ雨量計の配置(平成19年5月現在)
【図2】 レーダ雨量計の配置(平成19年5月現在)

 
 1.レーダ雨量計の観測原理
 レーダ雨量計は、回転するアンテナから指向性を持ったパルス状の電波を発射し、雨滴にあたり散乱して返ってくる電波を再び同じアンテナで受信し、以下のようにして、降雨の強度と分布を測定します。
 ・電波の往復する時間から距離を測定
 ・アンテナの向きから方位を測定
 ・受信電力(返ってくる電波の強さ)から雨量強度を測定

 
 2.レーダ雨量計の観測範囲
 レーダ雨量計は、半径200km(あるいは300km)の範囲まで観測を行っています。
 その内、半径120kmの範囲では雨量強度約1〜250mm/hrまでの定量的雨量観測が可能な性能を有しています。定量観測範囲では、レーダビームが雨雲より下にあり、反射電波の強度と雨量強度が定量的関係を有するように、機器の設計と運用が行われます。
 また、半径120km以遠は定性観測範囲としています。

 
 3.受信電力Prの測定
 レーダ雨量計は、降雨を直接観測する地上雨量計とは異なり、雨量強度に応じて変化する受信電力Pr(mW)を測定します。レーダ雨量計で観測される受信電力は、観測メッシュごとに5分間平均値Prで表されます。
 一般的にレーダ雨量計では、ひとつの極座標メッシュ内で、1回転毎に、レンジ(距離)方向1.5km当たり6個、セクタ(方位)方向1.4度(=360度/256)当たり9個、合計54個のパルス信号が平均されます。さらにこの1回転毎の平均値は、1仰角運用のレーダ雨量計の場合、5分間、25回転分が平均され、観測メッシュごとの5分間平均受信電力Prとして出されます。一定時間内に、できるだけ多くの信号を平均することが、降雨の定量観測精度の向上につながります。
レーダ雨量計と降雨との関係   レーダ雨量計の観測メッシュ
【図3】 レーダ雨量計と降雨との関係   【図4】 レーダ雨量計の観測メッシュ
 
レーダ雨量計と降雨との関係
【図5】 受信電力Prから平均受信電力Prへの処理過程

 
 4.レーダビームの遮蔽
 レーダ雨量計で精度の高い降雨観測を行うためには、できる限り低い高度で観測することが望ましいのですが、観測仰角をあまり小さくすると、山岳等によるレーダビームの遮蔽が生じます。
 山岳等による遮蔽の影響があると、その分だけ雨滴に達する電波と反射電波の量が減少し、遮蔽がある割合を超えると、雨量強度との関係が成り立たなくなって、正確な降雨観測ができなくなります。
 
レーダビームと山岳遮蔽の関係
【図6】 レーダビームと山岳遮蔽の関係

 
 5.グランドクラッター等
 レーダ雨量計の受信電力には、雨滴からの反射によるものの他に、山や建物からの反射によるものが含まれることがあります。これをグランドクラッターといい、観測仰角を低くする程グランドクラッターの成分は多くなります。
 降雨観測を精度良く行うためには、受信電力からグランドクラッターを除去する必要があります。この除去にはいくつかの方法がありますが、現在では、ほとんどMTI(Moving Target Indicator)方式によるグランドクラッターの除去(以後MTIという)が行われています。
 MTI方式とは、降水エコーと地形エコーの受信電力の振幅変動に差があることを利用して、グランドクラッターを除去する方法です。
 MTIによりある程度までのグランドクラッターを除去することができますが、同時に降雨の成分にも影響を与えます。また、大きなグランドクラッターのあるところでは、降雨の最少検出限界が大きくなること、グランドクラッターに重畳した降雨が過大に評価される場合があることに注意する必要があります。
 レーダ雨量計による観測では、グランドクラッターの他、海面からのシークラッターや鳥の群れ、電波異常伝播によるものなど、降雨以外のさまざまな反射電波が知られています。

 
 6.運用仰角と仰角合成
 レーダ雨量計の観測仰角は、以下の点を考慮して、できる限り低くなるよう設定します。
 (1)山岳等でレーダビームが大きく遮蔽されないこと
 (2)レーダビームが雨雲より下にあること
 (3)強いグランドクラッターができるだけ発生しないこと
 山岳などにより、低い仰角でのレーダビームが遮蔽される場合、そのセクタだけを高い仰角で観測し、複数の運用仰角による観測結果を合成する方が有利になる場合があります。
 
レーダ雨量計の観測範囲(定量範囲と定性範囲)   レーダ雨量計の観測シーケンス
【図7】 レーダ雨量計の観測範囲   【図8】 レーダ雨量計の観測シーケンス
(定量範囲と定性範囲) (2仰角運用の例。上の図の中で「5rpm」はレーダ雨量計の空中線の1分間の回転数を示します)

 このように、複数の仰角による観測を行った場合、仰角毎の受信電力Prを雨量Rrに変換した後に合成して、一枚の観測画面を作成することを仰角合成といいます。
 仰角合成の概念図を図9に示します。
 この例では、低仰角で観測した場合レーダサイトに対して北東方向に山岳があり遮蔽域となっているため、この領域は高い仰角のデータを用いて仰角合成を行っています。
 
仰角合成の概念図
【図9】 仰角合成の概念図


一般財団法人河川情報センター 〒102-8474 東京都千代田区麹町1-3 ニッセイ半蔵門ビル
TEL.03-3239-8171(代)  FAX.03-3239-2434   E-mail frics@river.or.jp ※セキュリティー対策のため@は全角
Copyright (C) 2011 Foundation of River & Basin Integrated Communications,JAPAN