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第1回 河川情報センター講演会 講演記録
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第1回 河川情報センター講演会 講演記録

 デジタル放送への期待

○開催日時 平成18年10月30日(月) 18:00〜19:30
○開催場所 (財)河川情報センター 3F  B・C会議室
○講  師 藤吉 洋一郎 氏
 日本災害情報学会 副会長/同学会デジタル放送研究会 代表
 NHK解説委員/妻女子大学文学部コミュニケーション文化学科 教授
○講演内容
 日本災害情報学会という学会があるということからお話しなければいけないかもしれませんが、もともと今年の4月に亡くなられた東大の廣井脩先生を中心として、マスコミの皆さん、ライフライン企業の皆さん、そういった方が集まって勉強会をする機会がありました。その勉強会をしている経験の中で11年前の阪神・淡路大震災を迎え、その後のさまざまな研究報告などの機会に、マスコミとライフラインの連絡会というものを作りました。つまり、あの混乱の中で一体何が起きたのか、どこがどうなっているのかという初期情報といいますか、被害把握に誰もが難渋したということから、そもそもの勉強会をもう少し日常活動という形で続けていくような仕組みを作ってはどうだろう、ということになりました。

 そうなるまでには数年かかったわけですけれども、その間にマスコミとライフラインの研究会のようなものを仙台、札幌、大阪、松山、そういったところで開きました。そういうローカルといいますか、地域の連絡会を作っていったわけですけれども、せっかくのその活動を一時的な線香花火に終わらせないで、恒常的なものにしようということで、学会というようなものにしよう、ということになったわけです。が、初めから大学の研究者という方はその中の一部であって、そのほかにマスコミとライフライン、行政機関の方、一般の企業の方といったように、極めて学際的な寄り合い所帯だったわけです。

 その活動を始めてちょうど8年がたちまして、昨日、一昨日と学会大会を東京で終えたばかりです。その学会6年目の事業として、初めての研究会というものをつくったわけです。つまり、さまざまな分野の皆さんの混成部隊で1つの目的のためにやってみようという試みが、デジタル放送の災害情報への効果的な応用ということをテーマに、やってみようではないかということだったわけです。

 

 私などは放送局に片足を置いているものですから、デジタル放送というものへの放送業界の期待と現実というところから見ますと、あまり過大な期待はできないなということがある意味ではわかっているわけです。けれども、それを言っていたのではせっかくのチャンスがみすみす実りを見ないで終わってしまうのではないか。そういう意味で、できない事情というところには目をつぶって、ではどうすればできるかという発想で条件を洗い出してみようではないか。そういうところから取り組むんですが、最初にお断りしておきますと、このチームはあくまでも放送の利用というソフト面からのアプローチに特化したチームでありまして、技術的な可能性というのは今回は対象にしておりません。

 まず、そのメンバーは、実にさまざまな分野から集まってきたのが1つの特徴です。例えば、もちろん大学の研究者はおりますけれども、気象庁の予報官という方にも参加していただいています。つまり毎日の天気予報はきちんとどこかで放送されるわけですけれども、予報官が一番伝えてほしい警報という事態になると、途端にその中身は放送というメディアの限界を超えてしまって、どこそこに警報が出ているということしか伝え切れなくなってしまう。強い台風が直撃するという事態を考えていただきますとよくわかるんですけれども、警報の本文の中身、そこに込められた予報官のメッセージを伝える機会がまるでなくなってしまうんです。

 もちろん軒並みに予報区に対して、さまざまな警報がぞろぞろと出るわけですから、それを伝え切れないという事情もわかってもらっているわけですけれども、せっかくのメディアが、そういう事態になると全く力を失ってしまう、伝えるメディアとしての機能が果たせない。それは、つまり例えばラジオあるいはテレビ、どちらもそうですけれども、大体少なくとも数百万人、多くなると1億人の方を対象とした情報の伝え方を余儀なくされているわけです。

 ところが、気象警報というのは1つの県を3つか4つにする。最近さらに細分化が進んでいますから。その細分化された地域にそれぞれ特有の違った情報を伝えなければいけない。放送の対象地域が1つの県だけで終わりというケースでしたら、それも可能かもしれませんが、関東地方のように、1都6県に1つの電波を届けているという状況になりますと、とても伝え切れない。もっとターゲットを絞って、狭い範囲を対象としたメディアがないと果たせない。

 そういうところで、デジタル放送になると地域を限定しての情報提供ができるということから、今まで伝えられなかった気象警報の詳細な中身、あるいは警報を出すに至ったデータ、そういったものをも伝えるようなことが可能ではないか。こういう期待をしたわけです。もちろん予報官だけではなくて、テレビやラジオの放送でみずから画面に出て、気象情報を担当している気象予報士の方も参加していただきました。

 それから、地震研究所からも参加してもらいました。つまり緊急地震速報というのをこの8月から一部の対象に限定して始めましたが、このような情報というのは従来の放送は極めてなじまないといいますか、得意でない情報なんです。関東地方一円の皆さんに間もなく地震が来ますと伝えても、例えば神奈川県のすぐ沖で起きた地震でしたら、その沿岸地域の皆さんには、おそらくその放送をしたころにはもう地震は来ているだろうと。少し内陸に入って東京ぐらいになれば、例えば10秒ぐらいの余裕はあるかもしれない。あと10秒後に来る。あるいは埼玉、群馬の皆さんには、もう少しさらに数十秒の時間があるかもしれない。

 そういう人に向けてできるだけ早く伝えようという場合に、放送の対象が関東1都6県でしたら、間もなく地震が来ますとしか表現のしようがない。海岸地方の方はもう来ているかもしれないということでは、せっかくの情報の意味が薄まってしまう。これがデジタル放送で地域を限定できるようになれば、もっと違った伝え方ができるのではないか。こればかりではありません。今まで地震に関連するさまざまな情報で、放送にはなじまないということで伝えられなかった情報をたくさんお持ちなわけですけれども、そういったものを伝えることが可能になるのではないか。こういった期待をかけた方もいたわけです。もちろん民放あるいはNHKからも参加しました。

 つまり自分たちの放送という中からの発想ではなくて、情報を提供してくれる皆さんの発想から考え直してみると、もっと伝えるべき内容、あるいは伝え方を見つけられるのではないか。そういったヒントを期待した人たちもたくさんいたわけです。さらに、さまざまな企業から参加した方には、こうした時代の新しいビジネスチャンスというものに期待をかけた人もあったかと思います。

 そのようにさまざまなメンバーが参加したわけですけれども、共通した関心というのは災害情報をデジタル情報が変えるのではないか。そういう期待があったということです。

 さて、災害情報学会として、私どもはこの研究会を発足させるに当たって何を期待したかといいますと、これまでの災害報道というものを振り返ってみますと、多くの場合、災害が起きてからの放送であったわけです。今、災害の被害を軽減する、被害をなくすという意味で、言いかえますと、人の命を救うことに情報を役立てようということになりますと、むしろ被害が出る前に伝えるべき情報があるのではないか。災害が起きてからの報道を災害報道と呼んできたわけですけれども、これから期待されるのはそうした災害を防ぐ放送、防災報道といったようなものでなくてはならない。災害が起きる前にどれだけ適切な情報を伝え得るかというところが課題ではないかと考えたわけです。そして、このデジタル放送の可能性の中に、防災報道としての使命を果たすツールとして、ある程度期待できるのではないかという期待を持ったわけであります。

 防災報道の最大の課題は、警報とか避難の勧告といったようなものを、いち早く必要な人に届けるということなんですけれども、それがどこまでできるかということであります。研究の目標はそういうことであります。

 デジタル放送とはどんなものかというのは、ここにお集まりの皆さんにはお話しする必要はないのかもしれませんが、たまたまある日のNHKのデジタル放送の画面の中から、例えばこれはニュースのメニューですが、こんなふうにメニューが幾つかあります。デジタル放送の画面はL字になっている白い部分ですけれども、黒っぽい部分が本放送の表の放送です。dボタンというのを押しますとこういう画面にシフトして、このメニューの中から自分の知りたい情報を選ぶことができるというわけです。

 それから、下のほうに出ている天気予報、これはあらかじめ自分の住んでいる場所の、これは家庭に置いてあるモニター、私の家のモニターですから、東京中野区の郵便番号が入っていまして、中野区の天気予報がここに表示されるというふうになっているわけです。これは地域によって違う天気予報が出るというわけです。

 こういうメニューの中から自分たちの知りたい情報を選ぶというわけですが、今、つまり災害情報という面で期待をしているのはこのニュースの中に、その中でもニュース速報的な、すぐに伝えたいというものをどうやって盛り込むか。ただ、今ここに挙がっていますニュースは、既に放送されたニュースのエッセンスなんですね。同じものがインターネットでニュースとしても流されています。ですから、今の警報とか避難勧告といったようなものは、放送されたものがぐるぐる回ってここへ入ってくるというのではなくて、いち早くここに登録されるというものを期待しているという意味では、今はされていないサービスということができるかと思います。

 そのほか、これはニュースの中身が1つ1つ項目ごとに選び出せるというサンプルでして、選び出したニュースの中身が短いエッセンスで左側の文字情報として表示される。これはその特徴であります。
 それから、天気予報についても、上のがさっき下にあったわけですけれども、さらに詳細なものを知りたいということで中へ入っていきますと、こういった詳しい情報を手に入れることができます。気象のメニューというのを選びますと、こういうメニューに入っていくことができるわけです。

 この辺は実は、どうやってこういう放送ができるかといいますと、天気のマークに当たるデータを気象庁からいただいているわけです。オンラインでデジタル情報としていただいている。このテレビ画面のほうはあらかじめ放送局側でつくってあって、所定の場所にその数値が入るとこのマークが出る。それが自動的にできるようにつくってあるわけです。ですから、データ放送というのは、放送の与えられた周波数の中のごく一部をデータ伝送のために使っているわけですけれども、その一部のデータであっても、こうしたテレビ画面のもとの情報として生かせる。画面そのものを全部データ放送のデータだけでつくっているわけではありませんが、見かけの上ではこういった画面がデータによってつくられたように見えるということです。

 同じような意味で、例えば台風情報といったようなものも、いただいているデータは中心の位置と過去の軌跡、予想されている進路とか、そういったデータですから、これだけのデータでこういう地図をかくことができる。表の放送画面は、そのときにはこんな小さくなっているわけです。これもこういう画面そのものをデータ情報として受けているわけではなくて、数値データだけを受けているわけです。

 そのほかに、これは暇なときに読んでいただきたいということで、例えば防災の一口メモのようなものが載っているページもあります。備えておけば安心というような表題にしてありますけれども、ラジオの利用の仕方、飲み水の備え、水のくみ置き云々といったような防災のメモみたいなものを伝えるページもあります。

 このようなものの中にうまいこと、先ほどの警報とか避難の情報といったものを入れることはできないだろうかということで、それではどうすればいいかということを考えるために、さまざまな分野の専門家をお招きして勉強会をする。あるいは実際に災害のあった現地に手分けをして入って、関係者の皆さんからもう1回、それぞれのシーケンスでどんな情報が発生して、それがどういうふうに処理されたかということを追跡調査して、それをもとに来るべきデジタル放送の時代には、どんな取り扱い方ができただろうかという、そういった考え方で調査をしたわけです。

 調査の対象としましたのは、新潟県の一昨年の水害、中越地震、一昨年の冬から去年の1月にかけての豪雪、それから三重県でありました一昨年の津波、土砂災害、それから九州の去年の台風14号による被害、こういった実際に大きな災害のあった現地に手分けをして入りまして、そうしたデータを収集してきました。さらに、関係者の皆さんにヒアリングという形で、そのときどう対応されたか、どんな反省材料があったかというお話をお聞きしてきたわけです。

 これが私どもの成果ですけれども、その前にもう少し現地調査をして、どんなことがわかったかというお話の方へ行ってみたいんですが、これはNHKのホームページからお借りした画面ですけれども、地上デジタル放送で何ができるのかという、その特徴等を紹介した部分ですけれども、ハイビジョンの放送ができます、高音質であります、このほかにデータ放送ができます、データオンライン。これはインターネットとの併用という形ですね。双方向も同じです。

 それから、マルチ編成といっているのは、12セグメントの周波数の放送帯を4セグずつの3つに分けることによって、通常の今放送されているようなアナログの放送の画質に相当するものを、3つのチャンネルで同時放送ができる。そのときハイビジョンの放送は犠牲にするわけですけれども、既に教育テレビのデジタル放送でこの運用をやっています。同時刻に片方では、例えば将棋の放送をしている、もう一方では料理番組をやっている、もう1つでは子供向けの学習をやっているというふうに同時に3つの放送ができる。これを災害のときに使えば、今までは放送できなかった放送局が自分の電波を持つことができるというので、例えば1都6県のようなところで自分の県だけを対象にした、放送局は各県にあるわけですから、電波さえ持てば自分の地域向けの放送ができるではないかということであります。

 私どもが主に注目をしたのは、データ放送という部分であります。これはデータ放送の紹介の部分ですが、交通情報というのもデータ放送で既に取り入れられているものであります。これもこういう地図情報が手に渡ってくるわけではなくて、そのもとになる数値データをもとにこういう画面をつくることができるわけです。

 それから、料理のレシピ。これは料理番組の中でレシピを短時間でメモるのは大変ですけれども、こういったものをデータ放送の画面にあらかじめ用意しておけば、皆さんがゆっくりとレシピを自分のものにすることができるというものです。

 実際の現地調査のデータですけれども、これは去年の14号台風のときの宮崎県、大淀川という宮崎市内を流れている大きな川がありますが、その川の洪水のときの記録です。これがその水位ですけれども、ここはゼロメートルで、3メートル、通常はそんなところぐらいですが、それがどんどん上がっていって、最終的には10メートルというような水位になってしまった。この赤い線は今危険水位と呼んでおりますけれども、ここを超えたら洪水は起きてもおかしくないというレベルなんですが、このときはこの水位をおよそ12時間突破してしまったというグラフです。

 これは、その時の宮崎の実際の雨量です。見てもおわかりのように、こちらに数値がありますけれども、毎時間の雨量は30ミリ前後というふうに大変な雨量ではなかったのですが、30ミリの雨というだけでも土砂降りですよね。この土砂降りの雨が何と3日も続いた、大型台風がすぐ近くをゆっくりと通った影響で、雨の多いこの地方にとっても初めてというような大雨だったわけです。その途中で、例えば大雨洪水注意報がこんな段階で出たとか、警報が出ましたとか、それから大淀川に対して洪水注意報が出たとか、洪水警報が出た、そういった記録がプロットされている図です。

 その部分をもう少し拡大したものがこういうわけです。想定外という言葉を随所で耳にしましたが、この危険水位を超えてしまうということが想定されていなかったという意味で、想定外の被害であったわけです。

 今のグラフの下のほうに、地元の自治体が避難勧告を出した記録がサンプルとして載っています。つまり、どれぐらいの水位の段階で避難勧告を出したのかということがわかるかと思います。水防団の待機、出動がそれに先立って行われていたわけですけれども、その水位の上昇ぶりを見て、間もなく危険水位に迫るという段階で、相次いで避難勧告が出されていったということが、これから読み取ることができるかと思います。中には、既にこれを超えてしまって、氾濫が起きてから避難を呼びかけたというところもあるという、そういった現場の混乱ぶりを示しているわけです。

 さて、そうした避難勧告が何時何分にどこに出されたかといったようなデータをもう1回一覧表にしてみたんですけれども、そのほかに警報というものがまずは気象台から出されます。9月4日午後4時38分に一番最初の大雨洪水警報が宮崎県の南部平野部、都城地区等に出たという、そこから始まったわけですが、だんだんその警報の範囲は全県に広がる。そうして大淀川の下流部に洪水注意報が出た。それは5日の10時50分でした。その段階で、これはちょっと入れかわっていますが、一部の地域に避難勧告が出た。さらに1時間後には本庄川という大淀川の支流でしょうか、そこに洪水注意報が出た。それから、大雨洪水警報の重要変更というのは、さらに事態が深刻になったような場合に警報を出し直すという意味で、いわばスーパー警報的に気象台が出すものですが、この地域にそういう情報が出た。そして、午後3時ごろに日南市4,300人に避難勧告が出る。その40分後には5,000人余りに避難勧告というふうに、どんどん避難勧告が続いていった。

 実は、こういうふうな情報がずうっとこの後6日の夕方、夜まで続くわけですが、大雨洪水警報とか河川の洪水警報は1つ1つ放送局に全部伝わってきて、それはそれで放送されるわけですけれども、こうした避難勧告といったようなものはほとんど伝わってこなかったわけです。それでは、どうして放送局は知ったかというと、それぞれの市町村の役場に放送局のほうから繰り返し電話をかけて、そういう情報をとる。その結果どうなったかというと、逐一こういう情報をフォローすることができなかったわけです。また、できたとしても、その中身をリアルタイムで放送することはできなかったでしょう、というのが各放送局からの証言でした。

 じゃ、こういった情報をどのように処理したかといいますと、最寄りのニュースの時間の中で、例えば日南市など幾つかの市町村にあわせて1万何千人に避難勧告が出ていますという程度で終わってしまっているわけです。1つ1つの地元の皆さんにとって、自分の家は避難勧告の対象になっているのかどうかということを知らせる情報にはならなかったということがわかりました。もちろん、1つ1つの避難勧告のもとの情報には、例えば日南市の何々町の何丁目から何丁目までの方というふうに、1つ1つ自分の家が入るか入らないかが地元の方にちゃんとわかるような情報になっているわけです。そういった情報が届かなかったし、また今までの取材の仕方ではそういう詳細な情報は伝え切れないということで、受け取ってもいないという実態が明らかになったわけです。

 それをデジタル放送のデータ放送という形でならば、放送はできるはずではないか。ここには日南市の4,301人としか書いてありませんが、もう少し細かく何々町の何世帯、何々町何丁目から何丁目までの何世帯というふうに全部リストアップしていって、それを文字情報としてのせる。もちろん見るほうの側は、それを一覧表の中から選ぶという作業が必要なのかもしれません。そういう形をとることによって、たくさんの情報でもキャパシティとしては伝えることが可能であるということであります。

 ただ、これがどれぐらいたくさんの情報であったかというのは、こういうふうに見ていけば1時間という時間の中で幾つもそういう情報が続いていく。例えば宮崎市ですと、いきなり午前2時15分に2万1,843人に避難指示。いきなり指示ですね、これは。そして、同じ時刻にその対象を拡大しています。こういうことから、これは時刻は1つしかありませんけれども、拡大をした時刻は少しずれているかと思いますが、いずれにせよその都度どこが拡大した地域かという、この段階ではデータをいただかなったので、1つになっているわけですけれども、実際の時間帯では違った時間ごとに違った数値として対象地域の地名が入っていくというふうになっていくかと思います。

 このとき一番多かったのは延岡なんですけれども、最初は小さな地域から始まったんです。6日の午前7時10分に6,000人ぐらい、そして7時15分にはそれを拡大する、25分にさらに拡大するとやっていましたが、それが8時半には今度は7万4,000人に、しかも避難の指示というものに変わっている。つまり、これは水があふれたということを示しています。

 このように、その後もまたさらに拡大をしたというふうになっています。これだけでも非常に大変な情報が目白押しなんですが、このときはまだ土砂災害の警戒情報というのが、鹿児島県だけで本運用になったばかりだったんです。鹿児島のほうはこうした洪水という事態にはならなかったんですが、土砂災害があちこちで相次ぎました。

 これと同じように、あるいはそれ以上に頻繁に土砂災害警戒情報が発表されています。これは市町村単位で発表されますので、これよりもっときめ細かな単位で情報が出てくるわけです。どこどこの市町村の土砂災害の危険地域はかつてないほど危険な状態になっているということで、避難の準備をしてくださいという情報を呼びかけるわけです。つまり何を言っているかというと、市町村長に対して避難勧告をしてほしいという呼びかけなわけです。そういうのがこのような状況になると、この間にどんどん市町村の数だけ入ってくるわけです。従来の放送では伝え切れないということは、容易にわかっていただけるかなと思います。

 しかも今度はデジタル情報だから伝えられるというふうに言いましたが、先ほど幾つかごらんに入れた地震情報とか気象情報、あるいは道路の交通情報、ああいったものは全部こういうデータでいただいているわけです。それをテレビ画面化しているから、放送局は人手をかけないで放送に出せているわけですが、こういう緊急事態に入ってくる情報を例えば紙ベースでいただいても、デジタル情報として加工する人手がない。それから、時間的にも追いつかない。そういう事情があります。つまり、こういった情報をどうやって寄せていただければいいのかというお話なんですが、それはデータ情報でいただかないと何ともならないということであります。

 私どもの研究会の1つの提言といいますか、たどり着いたところはこんなところなんですけれども、実は今はデジタル放送が全国展開、広がっていく過程でありまして、まだまだ放送してないところもあるわけです。それから、放送しているところでもまだデジタル放送の受信装置をお持ちでない方のほうが多いという段階ですから、そういう段階では実は放送局にとっては2つの放送を出さなければいけない。アナログの放送も出さなきゃいけないし、データ放送も出さなきゃいけないという二重の手間になっているわけです。

 そういう意味で、そこへデータ放送のデータ情報を入力するという新たな仕事、しかもアナログ時代には放送の対象にしていなかったようなものをここに入力するということがなかなかできないという過渡的な段階ですので、何ができるかということでぎりぎりお願いというベースで提言したのが、既に放送局はホームページをつくっておられて、そこにニュース速報的な情報を流しておられるわけですが、それはデータ放送にもちゃんと流すようにしてほしい。これでしたら放送局には新たな負担にはならないという意味です。

 問題は、何度も言いましたように、避難勧告の中身などで町の名前と丁目、番地、そういったところがないと、これは何ともならないわけです。しかし、これを入力して送ってくださいというのはこの段階では難しいかなというところです。

 そういう意味で2011年、すべての家庭のテレビがデジタル放送を受信できるようになって、アナログ放送の電波は出さなくていい。そういう段階になったら、放送局側もデジタル放送にもっと力を割けるのではないかということで、こういう提言をしております。つまりワンセグというのは携帯電話で受信できるように、放送の電波の一部を割いて特別な放送を流しているわけですが、携帯電話で地域を特定した情報提供ができるようにしてほしい。実は今の放送のスペックではワンセグの放送は全国一律の放送、しかもデータ放送も東京から流している一律の放送しか流せないようになっているんです。総務省が求めているスペックがそういうものになっている。それはサイマルと言いますけれども、2つの放送を同時に出さなきゃいけないということで、放送局への負担をかけないという意味もあって、そうなっているんだと思うんですが、デジタル放送の特性を生かすためには、せっかく1人1人が持ち歩いている携帯電話でデータ放送が受信できるんだったら、そのデータ放送こそ地域を特定したデータ情報でなければ意味がないではないか。そういう意味で、2011年までにはワンセグ放送のデータ放送のスペックをこういうふうに変えてほしいという提言であります。

 そうすることによってデータが、例えば中野区の皆さんにはこういう情報、世田谷区の皆さんにはこういう情報というふうに違った情報を差し上げることができる。GPSのついた携帯電話ですと、もうちょっと小さい範囲で、1人ひとりの情報というところまでほんとうは受け取れるのかもしれませんが、放送の場合には、どこまでそのサービスができるかというところでは、今のところ郵便番号ぐらいの範囲までということになっております。地上波デジタル放送の受信機は、今の段階から既に郵便番号の範囲まで仕分けした情報が受け取れるようになって、それで地域ごとの天気予報という形で提供しているわけですが、これも放送局の手間暇をかけなくても、そういうサービスができるオリジナルのデータ、気象庁からいただいているデータにそういうサービス内容の違いがあるからできるわけです。

 この4セグというのは地上波の電波を3つに分けて、今のNTSC並みの放送でチャンネルを増設して、災害報道を直接放送してはどうかという話であります。ところが、これは現地の放送局とディスカッションをしましたけれども、例えば宮崎などは1県1放送なんです。それから、新潟もそうです。そういうところでは、「ほんとうにそんな緊急時になったら、何もわざわざアナログ並みのチャンネルに薄めなくても、12セグ全部を使ってハイビジョンのままで緊急放送をやればいいんだと。東京からの電波は受けない。こう決断すればそれだけの話ですよ」という話で、そう言われてみると4セグの出る幕はないんです。

 ですから、関東とか近畿、中部といった大電波の地域にだけこの4セグのチャンネルを分離して、その地域だけに情報を流そうというケースはあるわけですけれども、どの程度これが利用されるか。走り出したばかりで、最初の設計されたスペックというのは本当にこれでよかったのかな?というところがチョロチョロと見えてきた側面もありますが、技術的な面にはコミットしないということで、ギリギリこうしたチャンネルの増設というのも、できるところではやってほしいというのが提言ということになっております。

 そこで、実は情報の受け渡しがデジタル情報で受け渡しをされないと、放送局側が対応できないということがはっきりしているわけですから、そういう意味で受け渡しについては全国統一的な新しいシステムをつくって受け渡しする。これをやることによって、情報を提供する側も受け取る側もお互いに労力が軽減されるということが前提ですね、ということで、そうした情報共有化の仕組みを早く実現させてほしいというのが提言であります。

 実はそういうやり方はもう既に実験が進んでおりまして、去年開幕された愛知万博、ここで博覧会の交通情報といったもの、あるいは催し物情報といったようなものを、博覧会協会とか交通機関との間で、放送局に共通の共有プラットフォームに入力していただくという形で放送に使ったという実績があります。その実績をもとにして、さらに行政機関、あるいはライフラインの企業、こういったところにも仲間に入っていただいて、そしてさらに災害時の情報伝達のツールとしてこれを使っていこうという実験を、何度かにわたって行って、大変有効であるという成果を得ています。

 TVCMLと書いてありますが、XMLというデータの伝送の方式がありますけれども、それのことで、テレビ向けのという意味でこういうニックネームをつけたんですが、どうもこれは「テレビ局のためにこういう情報をつくるのか!?」という意味で必ずしもプラスのネーミングではなかったな、と私は思っているんですが、これは利用する、例えばどこかの鉄道会社がこの仲間に入って情報源になりますと、共有プラットフォームをのぞきにいくことによって、行政からのお知らせ、あるいはほかのライフライン企業からのお知らせも全部入手することができるわけです。

 そういう意味で、自分たちが情報源になるばかりではなくて、豊富な情報の受け手にもなれる。しかも、これはインターネットのようにオープンになったものではなくて、閉じた仲間うちだけの情報伝達の仕組みをつくっているわけです。そういう意味で必ずしもテレビ向けの情報ばかりではないということであります。こうしたものを例えば岐阜県とか、あるいは近畿圏でも同じような方法で実験が行われています。この方式が有効であるということになると、このノウハウは全部オープンにしますということですので、自分の地域でもやりたいという申し出があれば、無償でそのノウハウを提供するということで、全国統一の仕組みに広げていこうという試みです。

 つまり、なぜ全国に1つのこういう組織をつくらないかといいますと、使い道がどんどん狭いエリアで使おうという目的なわけです。ですから、なるべく狭いエリアでチーム、仲間内をつくったほうが使い勝手がよかろう、ということで考えられているわけです。これをどんどんつなげていって、全国の情報が集まってくるようになっても、ほんとうに地域にとって役立つ情報になるだろうかという、そういうところもあります。過重な負担をかけないということもあって、こんなものを考えているわけです。

 このような方式を採用すれば、例えば避難勧告といったようなのは市町村長が出すわけですから、その避難勧告のフォーマットの出し方の条件を細かく決めておけば、最初に市町村名のこの番号が入りますとか、2つ目には災害の種別が入りますとか、そういうことを決めておけば、「どこからどんな情報が来たよ」というのがわかっていて、それで放送局側では「この段階までに避難勧告の出た市町村は?」というふうにリクエストすれば、それを一覧表とか、あるいは検索のできる情報をページとして取り入れることができる。そこに人の新たな労力は要らない。

 実は、それぞれの市町村ごとにそうした情報をホームページに載っけるということを、ほとんどの市町村でやっておられるんです。ですから、どうせホームページに載っける、そういう労力をかけているんだったら、どこかもう1カ所クリックする箇所を増やせば、この共有プラットフォームにも入りますよという関係をつくろうというわけです。そのほか国のさまざまな機関からの情報もこういう形でここへ流していただければ、もちろん放送局の側ではどういう情報が入ってくるかということをあらかじめ考えて、最初にごらんに入れたようなさまざまなデータ放送の画面をあらかじめつくっておくわけです。そうすればそのページの所定の場所に数値に基づいた情報が盛り込まれて、そういう情報として放送することが可能になるということであります。そういう意味で情報共有プラットフォームというのをつくろうというのがハードルであって、それができれば放送できますよという話であります。

 こうしたお話を、7月29日に災害情報研究会の公開フォーラムという形で、東大に会場を借りまして発表のフォーラムを開きました。また、同様趣旨のことを、9月22日には資金援助をいただきました放送文化基金の主催による報告会でも報告をしております。この9月22日の放送文化基金の報告会では、私どものほかに愛知方式の共有プラットフォーム実験をされました愛知県のチームの皆さんからの報告もありました。それから、さらに上智大学の音先生という方からは、全国の放送局に対してのデジタル放送に向けての取り組みについてのアンケート調査の結果といったような報告もありました。

 このアンケート調査の分析の結果を、又聞きではありますけれども、お伝えしますと、各地方のローカル放送局にとっては、デジタル放送へのシフトが大変大きな経営的なショックを与えている。つまり放送の設備を全部新たなものにつくり直さなければいけないわけです。すべての機材を更新するだけではなくて、電波を届けるための設備も全部つくらなければいけないのに、それは何らの増収につながる出費ではないという負担があるということで、各地方の、特に民放の地方局にとっては経営のまさに存亡にかかわる危機に陥っている、財政難のために。

 しかもチャンネルが随分増えてしまったということで、広告の需要といったものが必ずしも増えてないのに、それをみんなで分けなければいけない。特にインターネットに今そうした広告が流れているということから、地方民放にとっては大変財政的な危機に陥っているということで、経営者というのはいつも同じことを考えるわけで、何と人減らしをしているわけです。人減らしをすると、こうした放送をつくっていく人手のほうも減らさざるを得ない。そうすると、放送の番組を低下させなければいけない。そういう危機に陥っているというお話でした。つまりデジタル放送の新しいデータ放送のために、さらに人手をかけてというような話が全く現場には通じないという報告もありました。

 そんなことから考えてみますと、この情報共有プラットフォームというものが実現しないことには、全国の地方放送局にとってはデジタル放送のメリットをデータ放送という面で、しかも防災放送という機能にまで高めることには期待薄になってしまうというのが現段階までの報告であります。

 ということで、いただいたテーマは「デジタル放送への期待」ということで、あるいは非常に大きな期待が持てるというふうに、そこまで来ているのかなというふうに受けとめられた方も多いかと思いますが、もちろん情報共有プラットフォームをつくるということ自体は、もう既にできているわけですから、そう難しいことではないんですが、例えば東京でなぜやらないんだというところがあります。東京でやれば、随分全国見習っているところもありますから、各地方が追いかけてくるんだと思うんですが、実は民間放送局の立場が地方と違うんです。全国のネットワークのキー局であるというところが、民間放送局としての地方のローカル局と違う。地方からスポンサーを集めて情報を提供すればいいという仕組みになってない。全国を視野に入れた放送をしないとサービスにならない。

 ところが、このデジタル放送のメリットというのは、今の放送の電波の届くエリアをさらに狭めることによって、そのメリットを高めようというのが私どもの考えですから、どうも民放のキー局の置かれている立場と相反するようなところがありまして、例えば群馬のために特別な放送をしようというような発想がどこのキー局にもないんです。あるいは栃木のためでも同様です。そういうサービスが自分たちの増収につながるという発想がない。だから、一緒にやりましょうよといっても、利害が一致しないところがあって、なかなかうまくいかない。

 ただ、みんなと一緒にやらなくてもやれるところがあるんじゃないか。例えばCATVのような形で、非常に狭い範囲を対象にサービスをしておられるとか、あるいは1県を電波のサービスエリアとしている独立局のようなところ、そういうところとでしたらあるいは一緒にやれるかもしれない。そういう意味で、東京の中でも全部の放送局がもろ手を挙げて賛成して参加するという形は、名古屋のようには望めないかもしれませんが、どこか早くやろうというところだけでも一緒にやっていけばできるのかなと思っています。参加する行政機関、ライフライン等についても全部が手を挙げなくても、手を挙げたところから参加していく。それで、あんなやり方はどうやったらできるんだろう、どうやってやっているのというふうにみんなが関心を持って、それじゃ、仲間に入れてほしいという形で広がっていくというのが1つのやり方なのかなと思っております。どなたか手を挙げていただけないかなというのが、今のところの状況であります。

 以上、私が用意しましたお話はこれで終わらせていただきます。どうもご清聴ありがとうございました。

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